マンション管理士の仕事はこれから増えていくのか。
私は、この先の「住民の変化」と「マンションの変化」を考えると、必ずマンション管理士が必要とされる機会が増えていくはず、つまりマンション管理士の将来は明るい、と考えています。
マンション管理士に将来性はあるのか
マンション管理士の将来性を考えるために、マンション管理士が生まれた背景と現在の環境を確認します。
マンション管理士が生まれた背景

日本におけるマンションは、持ち家信仰が薄れていくに連れ、一生の棲家として一般的になってきました。
昔は「いずれは一軒家」までの「一時的なマンション住まい」という人が多かったのですが、「一生マンションで暮らそう!」という人が増えた、ということです。(私もそうです)
その理由は、なんといっても都市部の土地不足でしょう。都心に近い駅で一戸建てを持とうとしたら、駅までバスで15分徒歩30分とかはザラです。
逆に駅近という条件で一戸建てを探すと、都心からかなり遠くなってしまいます。
というわけで、今やマンションに住むのは当たり前のことになり、「いつかは一戸建てに!」という人は減っています。
となると当然ながら問題も発生します。
マンションは違う価値観・思いを持った人たちが一つの建物に暮らすので、様々な場面で意見が食い違うことが起きます。
さらに今後に目を向けると、これまでに建てられた多くのマンションが老朽化していき、修繕や建て替えが必要になっていきます。
そんな状況を踏まえ、2001年に国土交通省は「マンションの管理の適正化に関する指針」を出しました。ざっくりまとめると以下の内容です。
- 今後、老朽化したマンションが急激に増大していきます。修繕せずに放置したりすると住民が不便するだけでなく、周りの地域の環境も悪化させるなど、深刻な問題を引き起こすことがあります
- それを防ぐにはしっかりとマンションを管理することが必要。その主体はマンションの区分所有者等で構成される管理組合であるべきです
- 管理組合は、住民の意見をきちんと汲み取り、長期的な見通しを持って、きちんと資金計画を立てましょう。また業務を外部に委託する場合は、その契約内容をしっかり吟味しましょう
- 住民も管理組合のメンバーであることを自覚して、積極的に参加するようにすべきです。
- でもマンションの管理は、専門的な知識が必要になるので、マンション管理士などの専門家の支援を受けるのがいいでしょう。ただその場合も、自分たち管理組合が主体であることを忘れないことが大事
- 外部の専門家に、管理組合の理事長や理事になってもらうこともアリですが、そんな場合はマンションの区分所有者がしっかり監視しましょう
- 国・地方公共団体・マンション管理適正化推進センターは、支援体制を整備・強化しますよ
この指針に先立ち2000年に制定された「マンション管理士の適正化の推進に関する法律(マンション管理適正化法)」でマンション管理士が国家資格として設けられました。
つまり「マンション管理士」は、この先も住民が増え、かつ老朽化という問題が待つマンションについて、その管理を担うマンション管理組合をサポートする役割をするように作られた制度です。
マンション管理士を取り巻く現在の環境

2001年に予見されていたとおり、現在もマンションの需要は変わらず、新たなマンションの建設が続いています。そして同時に、既存のマンションの老朽化も進んでいます。
マンションの老朽化問題は、2019年頭のマンション管理会社トップのあいさつの中でも、やはり大きなトピックとして取り上げられています。
マンション管理業界の2019年のトピックは「働き方改革」と「高齢化・高経年化」
そんな中、管理組合をサポートする専門家として活躍が期待されていたマンション管理士はどんな状況でしょうか。
数字を見ると、なんと活躍の場が広がっているにも関わらず、マンション管理士の受験者・合格者とも減り続けています。

その原因は2つ考えられます。
①当初の人気がバブルだった
一般的な資格試験の受験者数がせいぜい数万人ということを考えると、制度が始まった当初の10万人という受験者数がある意味バブルで、だんだん普通の状態に近づいているのかもしれません。
②マンション管理士になってもすぐに仕事ができるわけではない
マンション管理士は、資格を持っていないとできない仕事といったものがありません。また管理組合もマンション管理士と契約する義務はありません。よって名実ともに「マンション管理士」になるなら、自ら仕事を獲得するような動きが必要となります。
受験資格は特に必要ないので敷居は低いものの、仕事に就こうとしたら苦労する。そういう印象が広まったマンション管理士は、資格としては人気が落ちているものと思われます。
マンション管理士の将来性

ではマンション管理士の将来はこの先尻すぼみなのか・・・
私はそんなことはなく、逆にこの先もっとマンション管理士に対するニーズが高まり、マンション管理士の将来は非常に明るいと考えます。
その理由はマンションの「数の増加」と、「質の変化」の2つです。
マンションの数の増加
特に都市部ではマンションの建設が続いています。
国土交通省によるとマンション総戸数は、2017年末で644万戸。まだ毎年10万戸ペースで増え続けています。
(クリックで拡大します)

そして、築40年以上のマンションは、今後20年間で約5倍に増え、2037年には350 万戸を超えるとのこと。
(クリックで拡大します)

国土交通省:マンションに関する統計・データ等
一戸に平均2人が住んでいるとすると、2031年には10人に1人が築30年以上のマンションに住むことになります。
これだけ高経年化したマンションが増えるからには、修繕や建て替えが必要となっていきます。
それによりマンション管理士が必要とされる場面が増えるはず。
マンションの質の変化
マンション数と住民数が増えるだけでなく、「住民」と「マンション自体」が変わってきており、それにより管理すべき内容も変わってきています。
住民の変化として、「高齢化」と「多国籍化」が進んでいます。
いずれは一軒家に、と考える人が減り、高齢になってもそのままマンション住まいを選ぶ人が増えたことから、マンション住民の高齢化も進んでいます。
マンション管理の面では、バリアフリー化が必要になったり、災害時のケアの準備が必要になったりします。
また、都市部では住民の多国籍化も進んでいます。マナーに関する感覚が違ったり、日本語だけだと管理組合の情報がきちんと伝わらないといった点に配慮が必要になってきます。
次に、マンション自体も変化しています。具体的には「大規模マンションの登場」と「免震、制震、耐震構造の普及」。
特に大規模マンションの1種であるタワーマンションは、特に都市部で一気に建築が進み、40階以上のマンションも多く見られるようになりました。
そしてそれらのマンションがこれから、誰も経験したことのない大規模修繕、いずれは建替えを迎えます。
果たしてその時、どんな修繕が必要となるのか?お金はどれくらいかかるのか?住民はどうしたらいいのか?
まだ誰もわからないことだらけです。
もう一つのマンションの変化が、免震、制震、耐震構造の普及。
たとえば免震構造はマンションの基礎にゴムの土台を並べ、その上に上部構造体が乗っていることが多いのですが、そのゴムを交換するという補修がこれから必要になってきます。
こんな「住民の変化(高齢化、多国籍化)」「マンションの変化(タワーマンション、免震構造等の普及)」に対応するのは、国交省のいう通り一義的にはマンション管理組合であるべきです。
ただそもそも誰も経験していないことを、マンション管理の素人である管理組合がこなすのは相当に無理があります。
そこで必要とされるのが、そういった変化に対応できる知識・ノウハウを持った専門家、つまりマンション管理士です。
こういった変化は必ず継続しさらに加速していくはずなので、マンション管理士がより必要とされるはず。
これが私がマンション管理士の将来性が非常に高いと考える理由です。
さいごに
マンション管理士が生まれた背景は、専門性が必要とされるようになったマンション管理組合の仕事をサポートするため。
現在はマンション管理士になろうとする人数は減っているものの、この先の「住民の変化(高齢化、多国籍化)」「マンションの変化(タワーマンション、免震構造等の普及)」を考えると、必ずマンション管理士が必要とされる機会が増えていくはず。
となると今後マンション管理士として仕事をするには、これらの変化にきちんとキャッチアップしていくことが強みになりそうです。
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