2022年11月25日小池都知事が会見を開き、臨海地下鉄のルート・駅位置を発表しました。
21年9月から始まった都主催の検討会が最終報告をまとめたことを受けての発表です。
この中で東京都としては初めて具体的なルートと駅位置を示しました。
ルート、駅については大きなサプライズなし
- ルート:これまで発表の通り、晴海通りの少し南を通り、銀座から晴海まで、その先は豊洲市場・ビックサイトに
- 駅:これまでは勝どき・晴海が一つの駅だったが、それぞれ別に設けられることに。東京、新銀座、新築地、勝どき、晴海、豊洲市場、有明・ビックサイト
気になるのは3点
- つくばエクスプレスとの接続は発表されず。単独でも採算が採れるとの試算
- 勝どきと晴海が2つの駅に分かれた
- 江東区の沈黙


発表の内容
小池都知事の発言
小池都知事の発言の要旨は以下です。
- 臨海部は今後、世界から人と投資を呼び込む、大いなるポテンシャルを持つエリア。この地下鉄は都心部と臨海部とをつなぐ背骨としての役割が期待されている
- 都は事業化に向けて学識経験者、国も参加する検討会を設置し事業計画案をまとめた
- 計画案では東京から有明・東京ビッグサイト駅を結ぶ距離約6.1キロ。駅は7つ。ルートや駅の位置の案は初の発表となる。
- 早期の事業化に向けて更に検討を進めていく。
出典:東京都HP
会見の模様はこちらです。
発表されたルート・駅名

ルート・駅の場所はこのような感じ。
- 東京駅:八重洲側の少し北側
- 新銀座:有楽町駅に並ぶ位置
- 新築地:旧築地市場
- 勝どき:現在の大江戸線勝どき駅あたり
- 晴海:トリトンスクエアと晴海通りを挟んで反対側
- 豊洲市場:ゆりかもめの駅の下
- 有明・東京ビッグサイト:北は有明ガーデン、南はりんかい線とゆりかもめの国際展示場前あたり
また検討会が発表した資料には、選定の考え方として「各駅に求められる機能の整理や導入空間等を踏まえた構造検討により選定」とあり具体的には下記の記載があります。
東京 | ・周辺路線との乗換利便性 (東京駅、三越前駅、日本橋駅、大手町駅) ・国際ビジネス拠点となる再開発との連携 (常磐橋プロジェクト) |
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新銀座 | ・周辺路線との乗換利便性 (有楽町駅、東京駅、銀座駅、銀座一丁目駅、 東銀座駅) ・周辺まちづくり(都有地活用、東京高速道路等) との連携 |
新築地 | ・築地まちづくりとの連携 ・銀座・築地周辺みどりのプロムナード構想と の連携 |
勝どき | ・大江戸線との乗換利便性 |
晴海 | ・鉄道空白地帯の解消 ・HARUMI FLAGとの近接性 |
豊洲市場 | ・周辺まちづくり (豊洲市場、ミチノテラス豊洲、千客万来施設 等)との連携 |
有明・東京ビッグサイト | ・周辺まちづくり(有明レガシーエリアのまちづくり、有明ガーデ ン等)との連携 ・りんかい線、ゆりかもめとの乗換利便性 |
発表されなかったこと
つくばエクスプレスとの相互接続について言及はありませんでした。また目指す実現時期についても触れられていません。
考察
発表の内容自体(ルートと駅)には大きなサプライズはありませんでした。

左が2015年中央区が発表した案で、右が今回の発表です。ルートは変わっていないことが見て取れます。
ただ、検討会メンバーには中央区・江東区の関係者が入っていないのにここまで具体的なルートと駅の場所が示されたのは意外でした。そしてそれを小池都知事がわざわざ記者会見で発表するということも。
小池都知事は2年後の次期都知事選の公約の目玉の一つとしたいのかもしれません。
さてサプライズがないとはいえ、今回の発表で興味深かったのは以下3点です。
- つくばエクスプレスとの接続は発表されず。単独でも採算が採れるとの試算
- 勝どきと晴海が2つの駅に分かれた
- 江東区の沈黙
気になる点① つくばエクスプレスとの接続は発表されず。単独でも採算は採れる
検討会の開始は21年9月。1年間という検討期間が事前に決まっていたとしたら、つくばエクスプレスとの接続の調整をするには時間が短すぎ、もともと検討会のスコープ外だったんでしょう。
国の答申では、2016年・2021年と2度も「常磐新線延伸(TX)との接続も含め、事業化に向けて関係者による検討の深度化を図るべきである」と書かれていますが、今後つくばエクスプレスを検討に巻き込むため、まずは臨海地下鉄単独での検討を深めたものと思われます。
ただ、2016年の国の答申では臨海地下鉄単独では採算が採れない(つくばエクスプレスと接続すれば採算が採れる)と試算されていましたが、今回の検討会では「費用対効果(B/C):1以上」(1以上であれば妥当)とされており、どのような環境変化(数字のマジック?)があったのか気になるところです。

また、今回の収支試算で、単独でも採算が採れると国からお墨付きをもらったことになるので、事業者も決めやすくなるはず。
東京メトロが建設するのは豊住線・品川線が最後と決まった以上、メトロが臨海地下鉄の事業者となることは期待できず、残る選択肢は都営地下鉄か第三セクターか。
どちらでも東京都がかかわることになりますが、採算がとれるというお墨付きは、都民から「税金を無駄に使うのか!」という批判をかわすときの大事な根拠となるはず。
また、つくばエクスプレスとの接続を交渉するときも、単独赤字路線ではなく黒字路線ですよ、と言えるのは大きなアピールポイントになるはず。
その意味で今回の検討会の収支試算結果は、臨海地下鉄を一歩前にすすめる上で大きな意味を持ちそうです。
気になる点② 勝どきと晴海が2駅に分かれた
2013年の中央区案では1つの駅だった勝どき・晴海が、2つの駅に分かれました。
左が中央区案、右が今回。

これは中央区がきちんと根回しした結果と言えるでしょう。
晴海フラッグ住民にはうれしい変更ですね。これまでは新駅ができても、都営大江戸線の勝どきまで行くのとあまり変わらないと言われていたので。
ただ右の地図を見て分かる通り、「新築地」「勝どき」「晴海」はホームの端からのぞくと次の駅が見えるのでは、というくらい近接しています。
駅を作るとそれだけ建設費がかさむわけで、これから建設費の見積もりを出すときには、この駅の必要性が論点になると予想します。
気になる点③ 江東区の沈黙
臨海地下鉄7駅のうち2駅(豊洲市場、有明・東京ビッグサイト)は江東区にあります。

今回の東京都からのルート決定の発表を受け、中央区は同日にそれを祝うコメントを発表しています。

それに対し、同じように地下鉄が来ることになった江東区は全く反応なしです。これは何を意味するのか?
江東区はこれまで臨海地下鉄には沈黙を保っていました。
2013年~16年にかけ中央区が、臨海地下鉄の競合となる「ゆりかもめ勝どき延伸」を『豊洲でずっと永遠に止まっていてほしい』などと散々けなして廃案に追い込んだ時も、黙って耐えました。
本ブログ記事:臨海地下鉄計画とは?その歴史と最新情報「2013~16年:ライバルのゆりかもめ延伸を阻止」
それもこれも、江東区には1972年からの悲願「有楽町線の住吉への延伸(豊住線)」があったから。豊住線に火の粉が及ばないように、江東区は他の路線には口出ししない姿勢を貫きました。
しかしその豊住線が50年たった2022年、ついに東京メトロによる着工が決まりました。もう遠慮するものはありません。
まず2022年10月、江東区長と小池都知事の会談で、江東区は「臨海地下鉄の終点を江東区が持つ海の森としてほしい」という要請を出しました。(東京都HPより)

臨海地下鉄をりんかい線に乗り入れて羽田まで直行、も考えている東京都や中央区にとっては頭の痛いリクエストかもしれません。
そして今回の都知事の発表に対して何の反応もない江東区は、「今の発表内容では満足していない」ということを暗に示していのかもしれません。これから更なるリクエストが出てくるかも。
まとめ
ルート、駅については大きなサプライズなし
- ルート:これまで発表の通り、晴海通りの少し南を通り、銀座から晴海まで、その先は豊洲市場・ビックサイトに
- 駅:これまでは勝どき・晴海が一つの駅だったが、それぞれ別に設けられることに。東京、新銀座、新築地、勝どき、晴海、豊洲市場、有明・ビックサイト
気になるのは
- つくばエクスプレスとの接続は発表されず。単独でも採算が採れるとの試算
- 勝どきと晴海が2つの駅に分かれた
- 江東区の沈黙




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