2021年7月15日、国交省審議会から「東京圏における今後の地下鉄ネットワークのあり方等について」が出されました。
今後の首都圏の地下鉄拡大の考え方と、東京メトロの民営化の進め方を示したものです。
たった7ページと短いものですが、これで新たな地下鉄2路線の建設が実質決まった、という超重要な文書です。
これまで事業主体が決まっていなかった「有楽町線豊住線」「品川地下鉄」について東京メトロが事業主体になることを求め、その建設費は公的資金から支援すべきとしたのです。
これまで決まっていなかった事業主・建設費負担が明確化されたことで、この2路線の建設はほぼ確定となりました。
また「臨海地下鉄」についても記載がありますが、こちらは「もっと事業化の検討を行うように」と書かれたのみで、新たな進展はなし。東京メトロが作ることはなさそうです。
- 有楽町線豊住線・品川地下鉄は東京メトロが作るべきと提言
- その予算は東京メトロではなく公的資金から支援すべきと提言
⇒豊住線・品川地下鉄は東京メトロが建設することでほぼ確定。
- 臨海地下鉄はさらに検討すべきとの記載にとどまる
⇒東京メトロが作るという目は消えた
参照元:国土交通省「東京圏における今後の地下鉄ネットワークのあり方等について」
東京圏における今後の地下鉄ネットワークのあり方等について
今回発表された「東京圏における今後の地下鉄ネットワークのあり方等について」は7ページの簡素な文書です。
首都圏の今後の地下鉄のあり方と、東京メトロの民営化に向けた進め方について提案するものです。
専門家からなる審議会から国土交通大臣への提案ですが、これに基づいて国が動くことから、実質政府の方針と言えます。
答申の背景
今回の検討は東京メトロの民営化に端を発しています。
東京メトロは2004年に設立から国と東京都が約半数ずつの株式を保有していますが、設立時からいずれ民営化することが決まっていました。
2020年、東日本大震災の復興資金に、国が持つ東京メトロ株の売却益を充てることが決まり、その期限が2027年に定められました。
今後完全民営化されると、国・都の意見が東京メトロの経営に反映されなくなる可能性があることから、国・都が株式を売却する前に、東京メトロが抱える大きな課題(新線建設)への対応と売却の仕方を合わせて検討する、というのがこの答申の目的です。
内容を詳しく見ていきます。
首都圏の今後の地下鉄のあり方(新線建設)
今回取り上げられているのは3路線です。
- 東京8号線(有楽町線豊住線)
- 品川地下鉄
- 臨海地下鉄
東京8号線(有楽町線豊住線)と品川地下鉄については、以下の通り特に問題はないとの意見です。
・国交省調査でも費用対効果、採算性とも良好
・事業主体の選定や費用負担の調整を早急に進め、早期の事業化を図るべき。
臨海地下鉄については以下の通りまだ検討が必要という内容です。
・具体化に向けた調査は実施されていない
・つくばエクスプレスとの接続も含め、事業化に向けた関係者による検討を深めるべき
基本的にこれまでの国交省答申と変わりありません。
事業主体と費用負担
今回のメインポイントです。新線建設の事業主体と、費用負担について明記されました。
事業主体については以下の観点から「東京メトロに対して事業主体となるよう協力を求める」
- 東京メトロの既存路線との関連性があり、運賃や乗換利便性などで既存路線と連携した検討が必要
- 地下鉄建設の技術力・ノウハウを持っている
費用負担については以下の観点から「十分な公的支援が必要」
- 東京メトロは株式上場を目指す方針で経営に悪影響を及ぼすべきではない
- 新線は東京メトロの利益のためというより社会的要請によるもの
- 特に8号線は東西線等の収入減につながる
ざっくりまとめると、
8号線・品川地下鉄とも、既存の有楽町線・南北線の延長なので、東京メトロに作ってもらいたい。
ただ新線で東京メトロが儲かるわけではないので、メリットを受ける住民を代表して国や都が建設費用の負担をすべき
という内容です。
民営化の進め方
最後に東京メトロの民営化(国と都が持つ株式の売却)についても提言があります。
国や都が東京メトロ株式を早期に売却してしまうと、新しい株主の意向で、新線建設が撤回されてしまうリスクがあるため、当面は国と都が株式の半分を持ち続けるべき。
また売却する際には公正な価格となるよう、国と都が同じタイミングで同じ量だけ売却することが重要、という意見が示されました。
この文書から読み取れること
8号線(豊住線)・品川地下鉄
これまで地下鉄新線建設にあたり一番の課題だった、事業主体がどこになるか、と費用をどこが負担するか、について今回の答申で方針が示されました。
東京8号線と品川地下鉄については、東京メトロが主体となるが、費用は公的支援を行うという内容です。
東京メトロの負担は基本的にないとのことで、これで東京メトロは断る理由がなくなったはず。8号線と品川地下鉄の建設は、実質確定と言えそうです。
臨海地下鉄
臨海地下鉄については今回の文書により2点が明確になりました。
- 建設は豊住線・品川地下鉄から遅れる
- 東京メトロが作ることはない
豊住線・品川地下鉄は、事業主体と建設費負担が決まり、建設がほぼ確定しました。
それに対し臨海地下鉄は、事業主体も建設費負担も決まっていません。国交省答申ではつくばエクスプレスとの接続を勧められていますが、表立って協議をしている話も出ていません。
これらの検討が終わらないと建設も決まらないため、臨海地下鉄は今回の2路線から早くても数年の遅れを取ったと言えそうです。豊住線・品川地下鉄は2030年代半ばの開業が目されているため、臨海地下鉄は仮に今後建設が決まったとしても開業は早くて2040年代でしょうか。
また、東京メトロは自己負担では新線を作ることはない、国は東京メトロ株の売却と公的支援はセットという方針です。そんな中、今回の答申に含まれなかったということは、この先東京メトロが臨海地下鉄を作るということはなくなったと言えそうです。
臨海地下鉄は、直通運転が見込まれるつくばエクスプレスが第三セクターということもあり、同じく第三セクターでの事業推進を目指すことになると思われます。
まとめ
2021年7月15日、国交省審議会から発表された「東京圏における今後の地下鉄ネットワークのあり方等について」は、今後の首都圏の地下鉄拡大の考え方と、東京メトロの民営化の進め方を示したものです
- 有楽町線豊住線・品川地下鉄は東京メトロが作るべきと提言
- その予算は東京メトロではなく公的資金から支援すべきと低減
⇒豊住線・品川地下鉄は東京メトロが建設することでほぼ確定。
- 臨海地下鉄はさらに検討すべきとの記載にとどまる
⇒臨海地下鉄は東京メトロが作るという目は消えた。
国が資金援助をすることを明記することにより、東京メトロにとって最後となる2つの新線の建設を決定付けた点で、歴史に残る答申となりそうです。
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