
2022年3月30日、東京都から「東京ベイeSGまちづくり戦略2022」が発表されました。
1年前に臨海副都心と中央防波堤エリアを舞台として、50年・100年先の未来の都市像を描いた「東京ベイeSGプロジェクトVer1.0」を発表していますが、今回の「まちづくり戦略2022」は、それを元に今から30年後の2040年代にどうなっていたいか、をまとめたものです。
この中に東京臨海地下鉄に関する記載もあり、同じタイミングで東京都から発表された「築地地区まちづくり事業実施方針」と合わせて、注目を集めました。
ただ臨海地下鉄は「区分B:2040年までの実現を目指す取組」となっているものの、「取組の特性により一部実着手・制度構築等を含む」と注記付きとなっています。また豊住線や品川線には記載のある「開業目標時期」の記載がありません。
つまりこの「まちづくり戦略2022」では臨海地下鉄に関する新たな事実提示はなく、地下鉄建設の確度が上がったわけではありません。
また、このドキュメントには、2016年の国交省答申で検討指示が出ていた「事業主体」や「つくばエクスプレスとの直通運転」に関する記載がありません。今回の戦略策定の中で臨海地下鉄について改めて検討されたわけではないようです。
- 東京ベイeSGまちづくり戦略2022は、東京都が2040年代までに実現したい湾岸エリアの未来像を示すもの
- 臨海地下鉄は「2040年までの実現を目指す取組」となっているものの、他の路線と異なり開業目標時期の記載がない。つまり実施は未定のままで、建設の確度が上がったわけではない
- 臨海地下鉄について改めて検討されたわけではない
参照元:東京都都市整備局「東京ベイeSGまちづくり戦略2022」

東京ベイeSGまちづくり戦略2022

今回発表された「東京ベイeSGまちづくり戦略2022」は、東京都が2040年代に達成したいベイエリアの姿を描いたものとなっています。
スライドで120ページの超大作です。
東京都:「東京ベイeSGまちづくり戦略2022」
戦略の概要

目指す姿は3つ
- 水辺と緑を生かしたひとに調和した過ごしやすい空間が広がり、人々を温かく出迎え、感動を与える、東京らしさの感じられる都市
- 快適で利便性の高い都市機能や世界を魅了する景観の中に、気候危機への対応がスマートに埋め込まれている都市
- 世界から惹きつけた人々の交流と多様な集積を源泉に、常にイノベーションを生み出していく世界から選ばれる都市
それを実現するのは5つの戦略
- 質の高い緑と魅力的な 水辺空間の形成
- リスクにスマートに対応する防災・減災対策の推進
- ひとと地球のためのデジタルと先端技術をまちの隅々まで実装
- にぎわい・交流・イノベーションを生む世界から選ばれるまちの実現
- まちの魅力や活動の基盤となる快適で多様な移動手段の充実
超ざっくりまとめると、目指す姿はベイエリアを2040年代までに「水と緑が身近に感じられる」「東京らしさを感じられる」「夜は建物や緑がデジタル技術も活かしライトアップされ魅力的な夜景がある」「災害の強いまち」にする。
それを実現する戦略として「水辺と緑を生かしたまちづくり」を行い「巨大地震や高潮対策などの災害対策」を進め、「デジタルを生かして脱炭素化と移動の高度化」を果たし「世界の人を呼ぶ地域の個性」を高める。加えて「鉄道・道路・船便」を充実強化する。
湾岸エリア住民としては、ぜひ実現してもらいたい内容です。
臨海地下鉄に関する記載

臨海地下鉄については、「戦略5:まちの魅力や活動の基盤となる快適で多様な移動手段の充実」の「鉄道ネットワークの充実強化」の中に、5つの路線の1つとして記述があります。
①羽田空港アクセス線(田町ルート)、②東京8号線(有楽町線豊住線)、③品川地下鉄、④臨海地下鉄、⑤蒲蒲線の順です。
実現時期については、①2029年度運行開始予定、②③開業目標2030年代半ば、と記載があるが、④臨海地下鉄については記載なし。
以上から読み取れる東京都のスタンスは以下のとおりです。
- 臨海地下鉄は、東京都が実現したい順位では4番目。①羽田空港アクセス線、②有楽町線豊住線、③品川地下鉄、④臨海地下鉄
- 臨海地下鉄の実現時期は未定
具体的記載内容
それぞれの路線に関する具体的な記載内容は以下のとおりです。
- 羽田空港アクセス線の新設(区分A、B)
機能拡充を図る羽田空港と国際競争力強化の拠点である区部中心部や新宿、臨海部等とのアクセス利便性の向上が期待される羽田空港アクセス線について関係者との協議・調整を加速(田町(東山手)ルート2029年度運行開始予定) - 東京8号線の延伸(有楽町線)(区分B)
臨海部と区部東部の観光拠点とのアクセス利便性の向上や東西線の混雑緩和が期待される東京8号線の早期事業化に向けた取組を加速(開業目標 2030年代半ば) - 都心部・品川地下鉄の新設(区分B)
リニア中央新幹線の始発駅となる品川駅及び同駅周辺地区と六本木等の都心部とのアクセス利便性の向上が期待される品川地下鉄の早期事業化に向けた取組を加速(開業目標 2030年代半ば) - 都心部・臨海地域地下鉄の新設(区分B)
区部中心部と開発が進む臨海地域とをつなぐ基幹的な交通基盤、言わば背骨としての役割。
大いなるポテンシャルを有するベイエリアの鉄道網を充実させ、東京を持続可能な都市にし、日本の成長を確かなものとしていく上で重要な路線臨海地下鉄の事業計画の検討を進め、路線の具体化を更に加速 - 新空港線の新設(蒲蒲線)(区分B)
東急東横線、東京メトロ副都心線などとの相互直通運転を通じて、国際競争力強化の拠点である新宿、渋谷、池袋等や東京都北西部と羽田空港とのアクセス利便性の向上が期待される新空港線の事業化に向けた関係者の取組を更に加速
区分A、Bの定義は以下のとおりです。
- 区分A:2030年までの実現を目指す取組(取組の特性により一部実着手・制度構築等を含む。)
- 区分B:2040年までの実現を目指す取組(取組の特性により一部実着手・制度構築等を含む。)
ここから前述の通り、東京都にとっての優先順位は4番目ということ。また、実現時期は2040年までを目指すものの、8号線・品川地下鉄と違って時期の明記がないので、時期未定ということが読み取れます。
このドキュメントから読み取れること
地下鉄のルート
この文書で地下鉄のルートが分かるのはこの図くらいです。

真ん中の緑の丸が臨海地下鉄です。左の紫はBRTで環状2号線、右の紺色は首都高晴海線で晴海通り。
これまで、「晴海通りの下」か「晴海通りと環状2号の間」のどちらかという話がありましたが、それと合致するもののどちらかは読み取れず、でした。
検討の進展
2016年の国交省答申では臨海地下鉄の課題が挙げられています。
【課題】
・都心部・臨海地域地下鉄構想は事業性に課題があり、検討熟度が低く構想段階であるため、関係地方公共団体等において、事業主体を含めた事業計画について、十分な検討が行われることを期待。
・また、事業性の確保に向けて、都心部・臨海地域地下鉄構想と<5>の常磐新線延伸を一体で整備し、常磐新線との直通運転化等を含めた事業計画について、検討が行われることを期待。
意訳すると
- まだ検討が浅いので、東京都が主導して誰が事業主体となるか(東京メトロ、都営地下鉄、第三セクター、その他?)も含め検討するように
- つくばエクスプレスの東京延伸と組み合せて直通運転すると収支が改善するので検討するように
また2021年7月の答申「東京圏における今後の地下鉄ネットワークのあり方等について」でも同様の指摘がされています。
- 具体化に向けた調査は実施されていない
- つくばエクスプレスとの接続も含め、事業化に向けた関係者による検討を深めるべき
今回のドキュメントでは、臨海地下鉄の事業主体に関する記載はありませんでした。また、つくばエクスプレスとの直通運転についても記載はなし。
つまり臨海地下鉄について国が示した懸念に対し、6年経っても東京都の回答はなかったことになります。今回の戦略検討にあたり、臨海地下鉄について改めて検討したわけではなさそうです。
まとめ
2022年3月30日に発表された東京都の「東京ベイeSGまちづくり戦略2022」は、東京ベイエリアが2040年代にありたい姿を具体化したもの。
臨海地下鉄に関する記載もありましたが、「東京都として臨海地下鉄は2040年までの実現を目指す取組みの一つ。ただし一部実着手・制度構築等を含むこともあるので、必ずしも開業目標が2040年までというわけではない」という内容で、地下鉄建設の確度が上がったわけではありませんでした。


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