2022年10月7日小池都知事と江東区の山﨑区長が会談をし、その中で、これまで臨海地下鉄については沈黙を守っていた江東区長が要望を提示しました。
臨海地下鉄の終着地点についてです。
- 江東区の初めての要望は「臨海地下鉄の終着駅を今はスポーツ公園となっている「海の森」としてもらいたい」
- ここで江東区が要望を出したのは豊住線の着工が決まったから
- 実現するかはつくばエクスプレスとの接続次第

江東区長と都知事の会談内容
2022年10月、小池都知事は都内の各区市町村の長と意見交換を行っています。10月7日に江東区の山﨑区長との会談がありました。
その中で山﨑区長は2つ小池都知事に検討を要請しました。
- 臨海地下鉄の終着地は「海の森」としてもらいたい
- 東京都の防災計画策定にあたり、高層住宅の震災対策への支援や水害時の支援の仕組みづくりをお願いしたい
今回は1つ目の臨海地下鉄の終着駅について掘り下げます
臨海地下鉄に関する要望
山﨑区長の臨海地下鉄に関する発言の趣旨は以下です。
- 海の森では、東京都が東京ベイeSG プロジェクトの一環として、モビリティや再生可能エネルギーの技術実装等の取組を推進中。また、東京2020 大会のレガシーとなる海の森公園は、2024年度末の完成に向けて整備中。
- 江東区も海の森の交流拠点を屋外スポーツやレジャーの拠点として、都心近傍で豊かな自然を感じられるパークエリアとすることを目指している。
- 東京都には、一体となるパークエリアである若洲地域との連携や、スポーツ・レクレーション・環境学習設備の整備等、魅力あふれる交流拠点になるよう配慮をお願いしたい。
- 交通アクセスの改善に向けて、構想中の臨海地下鉄を海の森に延伸するような可能性を残していただきたい
それに対する小池都知事・黒沼副知事の回答はこちら
- 海の森を含むベイエリアは、特徴である水辺、緑、大会のレガシーも活用し、誰もが行きたくなるエリアの形成を目指す。
- 臨海地下鉄は2021年7月に国の交通政策審議会で、区部の中心部と臨海部をつなぐ基幹的な交通基盤とされた。
- 昨年の9月から国の参画を得た検討会で、概略のルート、駅の位置等含めて事業計画の算定に向けた検討を進めている。
- 一般的に鉄道の整備、延伸の検討には、整備効果だけでなく将来的な旅客需要の見通し、需要採算性など様々な要素の整理が必要。引き続き検討する。
これまで臨海地下鉄について発言のなかった江東区から初めて要望が提示され「終着駅を海の森としてほしい」という内容でした。
それに対し東京都知事側は「本当に利用者がいるか、採算がとれるかを調べて決める」と回答しています。
海の森とは
海の森とはお台場・有明の先にあるごみの最終処分場(埋立地)。今は埋め立てが完了して公園となっています。
2021年東京オリンピックではボート・カヌー・馬術の競技会場となりました。
海の森がある中央防波堤埋立地は、実は最近までどの区に所属するか決まっていませんでした。当初は江東区・大田区・品川区・港区・中央区が帰属を主張しましたが、最終的には裁判を経て、2019年江東区に8割・大田区に2割帰属することになりました。

出典:日経新聞
もともと23区全てのごみを受け入れ、この埋立地へ向かうゴミ運搬車が通り渋滞や悪臭に悩まされていた江東区に一定の配慮がされた形です。
もともとゴミの処分地だったことから交通の便は悪く、車もしくはバスでしか行くことができません。
第二航路トンネルで青海と、東京港海の森トンネルで有明と結ばれている。また中央防波堤外側埋立地を介して、臨海トンネルで大田区城南島、東京ゲートブリッジで江東区若洲と結ばれている。
ただしいずれのトンネルや橋も歩行者・軽車両・原付バイクは通行不可のため、来訪する場合は自動車やバイク、または都営バス東京テレポート駅発着(テレコムセンター駅前経由)の波01系統「中央防波堤行き」を利用する。
出典:Wikipedia
今回の山﨑区長の要請は、せっかく帰属を獲得しながら交通アクセスが劣悪な海の森について、臨海地下鉄を通すことで問題を解決しようとするものです。
考察
山﨑江東区長の要請がどのような背景から生まれたのか、また、今後の臨海地下鉄の検討にどのような影響があるのか、考察してみます。
区長の要請の背景
これまで江東区は臨海地下鉄について、一切意見を表明してきませんでした。江東区を走る路線なのに、です。

なぜこの時期に初めて江東区長が臨海地下鉄について要望を表明したのでしょう。
それは過去の歴史に要因がありました。
臨海地下鉄がゆりかもめ延伸計画をつぶした
「ゆりかもめの豊洲⇒晴海・勝どきへの延伸」は2000年に国交省答申で正式に取り上げられた検討路線でした。

豊洲は江東区、延長先の晴海・勝どきは中央区です。江東区としては当然区民の利便性が上がり、中央区からの人の流入も期待できるゆりかもめ延伸を後押しする立場だったと思われます。
しかし2013年東京オリンピック開催が決まり、臨海地下鉄実現を目指すことにした中央区は、競合する計画「ゆりかもめ延伸」を潰しにかかりました。
東京都や国が、競合する路線のどちらかを選ぶときに重視するのは、当然そこに住む住民の意見なので、中央区は住民の意見としてゆりかもめ延伸不要論を強く表明したのです。
それが色濃く出ているのが、2014年2月24日中央区東京オリンピック・パラリンピック対策特別委員会でのゆりかもめ延伸に関する委員と副区長のやりとりです。
今野委員
- 風やさまざまな気象条件で運行がとまってしまう
- 現実にまちを分断してしまう
- 勝どきまでしか来ていないということでは意味がない
吉田副区長
- 豊洲から先の路線についての実現の可能性でございますが、基本的にゼロ
- 豊洲から勝どき終点なので、これは委員御指摘のとおり、地元にとって何の意味もない交通手段だというふうに思っておりますし、このことについては、私どもは絶対つくらせないというか、地元の方も含めて、つくらせない決意であるということは十分東京都には申し伝えてあるところでございます
- 豊洲でずっと永遠にとまっていていただきたい
ここら辺の経緯の詳細については下記を参照ください。
本ブログ記事:【詳細版】臨海地下鉄計画とは?その歴史と最新情報「2013~16年:ライバルのゆりかもめ延伸を阻止」
結局このような動きが功を奏し、ゆりかもめ延伸は臨海地下鉄と競合して採算が取れないとして都と国の検討から消え、臨海地下鉄が都と国のお墨付きをもらいました。
江東区としては忸怩たる思いがあったはずですが、次の豊住線の事情があったため、ゆりかもめ延伸計画潰しについては沈黙を守ったものと思われます。
江東区の悲願 有楽町線の延伸(豊住線)
1972年の国交省答申で検討路線として取り上げられた有楽町線の住吉までの延伸(8号線、豊住線)は江東区の悲願でした。
それが達成できないままでいた40年後の2013年に出てきたのが臨海地下鉄構想です。
江東区としては、豊洲市場・有明・東京ビッグサイトといった江東区エリアにつながるので表立って反対もできない。しかし豊住線・臨海地下鉄どちらも東京メトロに建設してもらいたいためライバル関係にある。
そのため江東区は豊住線については熱心に建設をアピールしたものの、臨海地下鉄については沈黙を守っていました。
しかし、2017年江東区は築地市場の移転先として豊洲を提供する代わりに東京都から豊住線建設の言質を取り付け、ついに2021年に東京メトロによる建設が決まりました。

2022年3月には東京メトロによる建設申請が許可され、正式に着工が決定。
これでライバル路線のことを気にしなくてよくなった江東区は、ついに今回臨海地下鉄について初めての意見を表明したものと思われます。
なお、その1か月後の2022年11月25日に東京都が臨海地下鉄のルート・駅を発表しましたが、江東区からは特段反応なし。これから江東区内のルートに意見が出てくるかもしれません。

江東区要望(臨海地下鉄を海の森に)は通るのか
「臨海地下鉄の終着駅を海の森としたい」という江東区の要望は通るのでしょうか?
「つくばエクスプレスとの接続次第」というのが私の見解です。
臨海地下鉄は、有明・東京ビッグサイトでりんかい線にぶつかりますが、そこでりんかい線に乗り入れ、羽田空港へ向かうという計画があります。
これまでは噂レベルでしたが、2022年11月25日発表の臨海地下鉄検討会の事業計画案では、下図とともに「臨海部や首都圏の国際競争力をより強化するため、羽田空港への接続を今後検討」と初めて公的文書に明記されました。

出典:都心部・臨海地域地下鉄構想 事業計画検討会「事業計画案」
これは根拠のない計画ではなく、臨海地下鉄と有明・東京ビッグサイト駅で接続する「りんかい線」はすでに羽田空港に向かう計画があります。

上の図の水色の線で、りんかい線の回送路線を使い新設の羽田空港アクセス線につなぐ計画です。
なお、上図オレンジ色の「東山手ルート」は羽田空港・東京駅を直通18分で結ぶ予定です。
りんかい線を通る「臨海部ルート」は羽田空港・新木場を直通20分で結ぶとのこと。
もしりんかい線が国際展示場(東京ビッグサイト)で臨海地下鉄に乗り入れた場合、羽田空港から国際展示場まで約15分、そこから臨海地下鉄で東京駅まで6駅15分くらいと考えると、東京駅までは30分となります。
羽田空港→東京駅で考えると、東山手ルートは18分、臨海部ルート+臨海地下鉄は30分と、臨海経由は12分も多く時間がかかるので、使い道はなさそうに見えます。
ただ、つくばエクスプレスが臨海地下鉄と接続すると話が変わりそうです。

臨海地下鉄が「もし、つくばエクスプレスと接続でき」「もし、りんかい線乗り入れが実現したら」という仮定ですが、つくばエクスプレス利用者が羽田空港に向かうとき2つの選択肢ができます。
- 乗り換えありの東山手ルート(つくばエクスプレス→(東京駅乗換)→東山手ルート→羽田空港):東京から18分+乗換時間
- 乗り換えなしの臨海地下鉄・臨海ルート(つくばエクスプレス→(乗換なし)→臨海地下鉄→羽田空港):東京から30分(乗換なし)
東京駅でも、秋葉原駅のようにつくばエクスプレスからJRへの乗り換えが5~10分かかるとなると、5分ほどのロスだが乗り換えなしの「臨海地下鉄・臨海ルート」の方がつくばエクスプレス利用者にとっては楽だろうと想像します。
というわけで、国からも「つくばエクスプレスとの接続を検討しなさい」と言われている臨海地下鉄は、つくばエクスプレス利用者のことを考え、りんかい線乗り入れを目指すはず。
となると、「臨海地下鉄の終着駅を海の森に」という江東区の要望は、有明・ビックサイトから羽田空港とは別の方向を目指すことになるため、つくばエクスプレスとの接続話が消えない限り実現しないのでは、と想像します。
江東区もそれを分かっていて「海の森へ延伸してもらいたい」という言い方ではなく、「海の森に延伸するような可能性を残していただきたい」という控えめな言い方をしたのかもしれません。
まとめ
- 江東区の初めての要望は「臨海地下鉄の終着駅を今はスポーツ公園となっている「海の森」としてもらいたい」
- ここで江東区が要望を出したのは豊住線の着工が決まったから
- 実現するかはつくばエクスプレスとの接続次第


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