2021年9月から東京都主催の「都心部・臨海地域地下鉄構想 事業計画検討会」(以下、臨海地下鉄検討会と呼びます)というものがひっそり始まっていました。
7月の国交省答申で「検討を深めるように」というコメントがあったことを受けてとのことだと思われます。
公表されている情報は非常に少ないのですが動きを読み解いてみます。
- 扱うのはルート・駅位置等の検討、概算事業費の算出、 需要予測・事業性の検証、事業スキームの整理
- 臨海地下鉄検討会のメンバーは国交省も入っている。中央区関係者は含まれず
参照元:東京都都市整備局「都心部・臨海地域地下鉄構想 事業計画検討会」

都心部・臨海地域地下鉄構想 事業計画検討会
臨海地下鉄検討会は、2021年7月の国交省答申の中で「検討を深めるべき」と記載されたことを受け、2か月後に設置されたものです。
そんな影響のある国交省答申とはなにか振り返ります。
国交省答申とは
国土交通省は要望がある鉄道新線のうち、どれを建設すべきか決めるため、専門家からなる審議会にアドバイスを求めます。
臨海地下鉄は2016年、2021年の答申で取り上げられました。
2016年国交省答申における臨海地下鉄
臨海地下鉄が初めて国交省の答申で取り上げられたのは2016年「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について」です。
オリンピックに向けて中央区が独自に事前検討を行うなどの努力が実を結び、正式に国が検討すべき新路線としてお墨付きを与えた形です。
実際の表記はこちら。

<6> 都心部・臨海地域地下鉄構想の新設及び同構想と常磐新線延伸の一体整備 (臨海部~銀座~東京)
・東京駅付近において常磐新線と相互直通運転を行う。
【意義】
・国際競争力強化の拠点である都心と臨海副都心とのアクセス利便性の向上。
・山手線等の混雑の緩和。【課題】
・都心部・臨海地域地下鉄構想は事業性に課題があり、検討熟度が低く構想段階であるため、関係地方公共団体等において、事業主体を含めた事業計画について、十分な検討が行われることを期待。
・また、事業性の確保に向けて、都心部・臨海地域地下鉄構想と<5>の常磐新線延伸を一体で整備し、常磐新線との直通運転化等を含めた事業計画について、検討が行われることを期待。
課題をわかりやすく書くとこうなります。
- 費用対効果があるのか怪しい。検討が十分でないので、東京都などが中心となって、どんな事業者が作るべきかを含めた収支をきちんと計算すべき
- 「つくばエクスプレスの秋葉原→東京延伸」と組み合わせて、つくばエクスプレスと直通運転すると、収支が改善するので検討するように
2021年国交省答申における臨海地下鉄
2016年度に収支検討すべきと言われながら、その後、臨海地下鉄に特にそのような動きはありませんでした。
次に国交省答申に臨海地下鉄が登場したのは5年後の2021年です。
2021年、国・東京都が保有する東京メトロの株式を売却することになり、その前に東京メトロが抱える大きな課題(新線建設)への対応が検討され、2021年7月の国交省答申「東京圏における今後の地下鉄ネットワークのあり方等について」が発表されました。
この中では、有楽町線の延伸と品川地下鉄については、東京メトロが主体となること・費用は公的支援を行うことが提案され、ついに建設が実質決定しました。
それに対し臨海地下鉄は記載があったものの「事業化に向け関係者の検討の深度化を図るべき」つまり、まだ検討が足りない、と書かれてしまいました。
都心部・臨海地域地下鉄構想は、世界から人、企業、投資を呼び込み、東京と日本の持続的成長を牽引する臨海部と区部中心部をつなぐ基幹的な交通基盤としての役割を担うことが期待されており、今後、臨海部の都市づくりとともに、第198号答申において指摘されている常磐新線延伸(TX)との接続も含め、事業化に向けて関係者による検討の深度化を図るべきである。
国交省答申「東京圏における今後の地下鉄ネットワークのあり方等について」から引用
臨海地下鉄検討会の設置
上記国交省答申から2か月後の9月、東京都がついに重い腰を上げました。
「都心部・臨海地域地下鉄構想 事業計画検討会」が始まったのです。
答申で指摘された「事業化に向けて関係者による検討の深度化を図る」ために設けられたものと思われます。
臨海地下鉄検討会が扱う内容
検討会で扱う内容は設置要項に記載されています。
- 客観的かつ合理的なルート・駅位置等の検討、概算事業費の算出、 需要予測・事業性の検証、事業スキームの整理
- その他必要な事項
つまり、ルートや駅位置を検討し、それを踏まえた費用や収入の見通しを立て、誰が運営すべきかを検討する。
この地下鉄の大事な部分をすべて検討することになりそうです。特にルートや駅位置がここで決まるのか、が気になる点です。
臨海地下鉄検討会のメンバー
開始当初(2021年9月)時点のメンバーは下記のとおりです。
- 岸井 隆幸: 日本大学理工学部 特任教授(委員長)
- 岩倉 成志: 芝浦工業大学工学部 教授
- 大串 葉子: 椙山女学園大学現代マネジメント学部 教授
- 廻 洋子: 敬愛大学国際学部 特任教授
- 金指 和彦: 国土交通省鉄道局都市鉄道政策課長
- 廣田 健久: 国土交通省関東運輸局交通政策部長
- 土屋 是広: 国土交通省関東運輸局鉄道部長
- 依田 淳一: 独立行政法人鉄道・運輸機構技術企画部長
- 梅津 武弘: 独立行政法人都市再生機構 東日本都市再生本部事業企画部 担当部長
- 谷崎 馨一: 東京都都市整備局都市基盤部長
完全外部の大学教授が4名、関係者である国交省から3名、自治体である東京都からは1名。これまでの国交省答申の主役の鉄道局都市鉄道政策課が入っています。
東京都主催ということで、東京都や沿線の中央区・江東区の関係者が入るのかと思っていましたが、23区からは参加メンバーなし。
その代わりに国交省の鉄道政策決定にかかわる幹部が入っていて、東京都の意気込みを感じます。
この検討会が、国交省答申の指摘する「事業化に向け関係者の検討の深度化を図るべき」に対してどのような回答を示すのか、とても気になるところです。

まとめ
2019年9月東京都が臨海地下鉄検討会を設置しました
- 取り扱うのは、客観的かつ合理的なルート・駅位置等の検討、概算事業費の算出、 需要予測・事業性の検証、事業スキームの整理
- メンバーは、大学教授、国交省幹部など。中央区関係者は含まれず
これからどのように検討が進むのか楽しみです。


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