コラム

日経新聞とマンション管理新聞に見る、マンション管理不全の現状と今後の課題

私がマンション管理士の勉強を始めてから、初めて日経新聞でマンション管理に関するニュースを目にしました。

2019年2月6日の日経新聞3面に
マンション「空き家」深刻 管理組合なく修繕もできず 対策急ぐ自治体、都は新条例案ー』
という記事が出たのです。
さわりはこんな感じ。

マンションの空き家問題が深刻な影響を及ぼしている。管理組合が機能せず、基礎的な修繕もできない物件が水面下で増えている。東京都が管理状況の届け出を義務化する条例案を20日開会の定例議会に提出するなど、自治体も対策に乗り出した。だが、空き家増加が管理不全をもたらし、さらに空き家が増える負のスパイラルを食い止めるのは容易ではない。

奇しくも同じタイミングの2月5日号マンション管理新聞に
『管理不全「症例」を類型化 ー管理士3人が実例報告ー』
という記事が掲載されました。

この2つの記事から、マンションの管理不全の背景と現状、そして防止に向けた取り組みと課題を考察します。

しかし日経にこんなに大きく取り上げられるとは、やはり社会全体として看過できない課題になっているんですね。

マンション管理不全の現状

日経新聞によると、

  • マンションの15.9%に管理組合がない(東京都2011年調査)
  • 戸建ても含めた空き家の数は約820万戸
    うち、分譲マンション+賃貸アパートなどの共同住宅の空き家は約417万戸
    さらに、うち173万戸は建築時期がわからない(総務省2013年調査)
    ※【参考】全国の分譲マンションの戸数は600万戸(国土交通省HPより)
  • このままでは、空き家が増える+管理組合がない ⇒ 修繕ができない ⇒ 危険な損壊が放置・犯罪の温床に ⇒ 空き家が増える、の負のスパイラルに陥るリスクがある。

またマンション管理新聞も、マンション管理士の経験から同様の指摘をしています。

  • マンション管理の不全 ⇒ 共用部のメンテナンスがされない ⇒ 合意形成が困難化、役員がなり手不足に ⇒ マンション管理の不全、という悪循環が起きている。

両方の情報を合わせると、マンションの管理不全が広がりつつあり、データの面からも実務の面からも、このままだとさらに広がっていきそうということがわかります。

マンション管理不全が起きる背景

マンション管理不全が起きる理由を、マンション管理新聞では4つにまとめています。

  1. 管理組合の未形成:一人が全部所有 ⇒ 一部売却や相続で区分所有に ⇒ 管理組合未形成のまま
  2. マンションの2つの老い:建物の老朽化、住民の高齢化
  3. マンションの2つの空洞化:賃貸化、空室化 (+多国籍化も含めると、3つの空洞化?)
  4. 区分所有者間トラブル:管理組合は利害の異なる区分所有者の集合体のため、管理組合の数だけトラブルがある。ただしトラブルが多発すると役員辞退者が増加

さらに管理不全マンションのパターンを5分類12種に分解しています。

  • I)管理組合がなく管理不全
    ①管理組合未形成型
    ②自治会管理組合型
    ③世話人対応型
    ④相続分譲マンション型
    ⑤複合用途分裂型
  • II)管理組合の人的問題から管理不全
    ⑥名ばかり役員型
    ⑦ワンマン理事長型
  • III)事件性管理不全
    ⑧理事長交代不正発覚型
    ⑨組合長期内紛型
  • IV)管理会社に問題あり管理不全
    ⑩管理会社フロント停滞型
    ⑪管理会社任せ機能不全型
  • V)組合員の属性に変化が生じ管理不全の兆候
    ⑫管理組合のパワー低下型

日経新聞では、相続がきっかけで空室が増え、管理組合のなり手や管理費・修繕積立金が減っていることが管理不全の一因と指摘しています。

合わせると、マンション管理不全の要因は、マンションの歴史が長くなり建物も住民も長い年令を重ねてきていること、そしてそのせいで管理組合がうまく機能しない事態が発生していることによるようです。

マンション管理不全を防ぐ取り組みと課題

このような管理不全を防ぐための取り組みとして、日経新聞では自治体の取り組みを紹介しています。

  • 東京都:管理組合や管理規約の有無などを提出させ、マンションに組合の設立を支援したり、運営方法についてマンション管理士らが相談に乗ったりするようにする予定
  • 豊島区:13年から届け出を義務化し、未届けのマンションに区職員や管理士が訪問し、組合が機能するように支援
  • 横浜市:従来、組合から要請があった場合に限り支援してきたが、18年度から、不安のあるマンションには要請がなくても市職員や管理士らが訪問
  • 大阪府:17年に管理状況の登録制度を整備 (登録は任意)

また、全国で空き家の管理を担うNPO法人「空家・空地管理センター」の上田代表理事の提案を紹介しています。

  • 所有者の死後に空き家になる可能性が高い部屋を、自治体や管理組合へスムーズに寄付できる仕組みを作るべき
  • これにより、寄付される側の負担は増すが、所有者が不明・不在の状態を防ぎ、対策を講じる態勢が整う
  • マンション管理は所有者の責任という従来の常識にとらわれない発想が求められる

またマンション管理新聞では、管理不全に立ち向かうマンション管理士の心構えとして以下を紹介しています。

  • 公平、公正に粛々と業務を遂行すること
  • 弁護士ではないので、依頼者やその時の理事長の言い分を聞き肩入れするのではなく、管理組合の利益のために助言すること
  • 居住者の人間関係に配慮し、トラブルに巻き込まれないように配慮する一方、トラブルを恐れず解決に乗り出すことも必要

うーむ、マンション管理士にとっては厳しい現実ですね。これは実体験を踏まないと難しいかも。
サラリーマンをしながら目指すとしたら結構厳しいなぁ、というのが私の印象です。

さいごに

日経新聞とマンション管理新聞は、図らずも同じタイミングでマンション管理不全問題を取り上げ、問題解決の方法をトップダウン(自治体の取り組みや法制度の整備)とボトムアップ(マンション管理士の取り組み)の双方で提示しました。

おそらく双方の取り組みを同時に進め、お互いを補完し合わないと、この先のマンション管理の課題を乗り越えることはできないのでしょう。

マンション管理士としてはなかなか大変な状況ですが、さらに頼られる機会も増えそうですね。

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